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ISBN 978-4-532-11023-9組織デザイン
沼上 幹
日本経済新聞社 2004-06-15
[日経文庫 F40]

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組織の中で仕事に従事する場合、キーポイントとなってくるのが組織像である。
どんなに真面目に働いていても組織デザインがきちんと成されていなかったら水の泡であるし、
良い組織は社員のモチベーションを大いに刺激して、会社の成長に一役買う結果となる。

組織の理想的なカタチを模索する学問分野を一般に「組織論」と言い、
本書はその「組織論」を理解するために必須の一冊だ。

例えばお弁当をライン生産する会社に100人の社員がいるとしよう。
もし仮に組織という概念が全くなく、社長から平社員まで全員個人プレイで弁当を作り出すとどうなるか。
一人ずつ自前で米を炊いて、一人ずつ箱に詰めて、それぞれが店頭に立って売りさばいていく...
...恐ろしく非効率的であり、あまりにも無駄が多すぎる。会社が潰れるのも時間の問題だ。

なので余程の例外を除いてどんな組織でも"分業"が行われているのが一般的である。
仕込みをする人、おかずを配置する人、梱包する人、運送する人...
分業することによってそれぞれの組織に所属している人たちは各々の仕事に集中することができ、
その結果として専門性や効率性がアップし、会社の生産性はどんどん上がってゆく。

しかし組織はそんな単純なデザインだけでは上手く機能しない。
本書は対象が機械でなく人間であることに特に留意しながらわかりやすく説明を付け加えている。
機械ならば並べたり繋げたりするだけでシステマチックに組織が機能するのだが、
(それでも突然の事故や耐用年数といった問題は生じてくる)
人間の場合は感情の要素が入り込んでくるので更に複雑になってきてしまうのだ。

仕事の負荷があまりにも大きすぎれば不満が蓄積されて現場の士気は低下してしまうし、
人間である以上は体調による波は避けられないし、同僚との人間関係も生産力を左右する重要な要因となってくる。
そこでそんな不確実性な事象に対処すべくヒエラルキーやグルーピングといった組織デザインが成されるわけだが、
教科書的な方法をもってしても実は答えが存在しないのが組織論の大きな特徴であると言って良いだろう。

市場の需要や社員の能力によって理想とされる組織形態はかなり異なってくる。
市場に追いつけ追い越せだけで組織をデザインすると長期的な視野を失ってしまい、
また例外事象に対処するために管理職をやみくもに増やしても組織が硬直するだけだ。

どういった場合にどんな組織が最も有効と考えられるのか--
最新の研究を踏まえてわかりやすく組織論を解説する本書はまさに必読モノだ。
出来るだけバランスを保ちながら、柔軟にグルーピングしていくことが組織デザインの極意であり、
これは特に税金の無駄を垂れ流す自治体がもっと考えなければならない至近な課題である。

「組織デザイナーは視野を広くもつと同時に、
 多様な手段を節操なく組み合わせる折衷主義者の志向性をもたなくてはならない」 (p280)

自分が所属する組織の構造を知りたいあなたにオススメの一冊。

ISBN 978-4-08-720012-6笑いの経済学―吉本興業・感動産業への道
木村 政雄
集英社 2000-01-23
[集英社新書 12A]

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吉本興業という会社を知らない人はおそらくいないだろう。

大阪を拠点に置く言わずと知れた"日本最大の芸能プロダクション"で、
会社の規模的には決して大企業というわけではないのだけれども、
知名度と影響力に関しては全国的に絶大な力を誇っている急成長企業だ。
(それは今週刊誌を騒がせている吉本興業を巡る黒い疑惑が
 テレビ・新聞等では一切報じられないことからも伺える)

特に大阪での吉本の存在感は圧倒的で、生活レベルにまで吉本イズムは浸透している。
このように一般社会への影響力まで併せ持つ芸能プロダクションは他地域にはないのではないだろうか。

本書は当時吉本興業の常務取締役であった著者が吉本流の経営ノウハウをまとめ、
「笑い」を軸とした組織論・地域再生策・景気回復策を提言した一冊である。
タイトルに「経済学」とあるが経済書特有の回りくどさは全くなく、
全体的なテイストはお笑い企業のトップらしくスポーツ誌のコラム並に軽い。

最も印象的なのはエンターテイメント産業を代表する位置にいる企業なのにも関わらず、
総研やマーケティング的な要素を「ずっこい」と言い放ち否定していることだ。

この業界では売れるために完璧なマーケティングを立てることはもはや必須要素だが、
だからといって必ずしも社会に受け入れられてヒットするというわけではない。
むしろ"想定外"の売れ方をすることの方がこの業界には多く、
お笑いの世界では特にその傾向が強いのではないかと"いち視聴者"として感じている。

「市場では今、こういうものが求められているから、
 こんなものを出そうという体制はわが社にはありません。
 まず思いが優先しないとだめなんです」 (p144)

また関西経済をいかにして復興させるかという問題にも本書は積極的に触れているが、
提言そのものが吉本興業という会社の枠に捕らわれすぎている感があって空回りが否めない。
もう少し大局的な視点から関西経済の未来を論ずることは出来なかったのであろうか。

最後には当時招聘活動をしていた大阪オリンピックへの熱い思いが綴られている。
結局大阪にオリンピックが来ることはなく2008年は北京で開催されることになったが、
今大阪市はその処理に莫大な借金を注ぎ込んでいて、財政はすでに夕張状態と化している。
東京オリンピックが招致されるか否かが都知事選の争点となっているけれども、
都民の皆様にはぜひ夢洲・舞洲・咲洲の惨状を見ていただきたい。確実に思いが変わるはずだ。

吉本興業とはどういう会社かが一通りわかる一冊。

2008年4月

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