![]() | 17歳にもどりたい 佐々木 綾子 文芸社 2007-09-14 by G-Tools |
今更強調して書くことでもないが、私は急性リンパ性白血病を2005年に患った。
骨髄移植をしてまもなく2年。おかげさまで絶好調な日々を謳歌させてもらっている。
振り返ってみるとこの2年半は目まぐるしく様々な出来事が起こっていった。
中でもすべての始まりである「病名宣告」の瞬間は今でも鮮明に覚えている。
入院当日、確か夕暮れのちょうど夕食がやってくる時間帯だったと記憶しているが、
主治医となる先生がやけに明るい口調でベッドサイドから私に囁き始めた。
「○○くん(←名字)ねー、白血病やねん。急性リンパ性白血病。
カンニングの中島って知ってる?あの人と一緒の病気」
実を言えばこのように言われたときはそれほどショックではなかった。
それは先生が今にも治りそうな口調で軽々しく言っていたのも一因だが、
何よりも病気に対する無知がクッションのように衝撃を遠ざけていたのが主因だろう。
そんな私が眠れぬぐらいのショックを受けたのがインターネットで真実に触れたときである。
8月上旬、無菌室へノートPCを持ち込み、AIR-EDGEでネットへ繋ぐと、
真っ先に国立がんセンターのサイトへアクセスして自分の病気のことを調べてみた。
するとそこには信じられないくらいの事実が列挙されていたのだ。
化学療法の5年生存率は30%で、特に私の場合は化学療法だけでの治癒が絶望的であり、
骨髄移植を選択することは避けられない--
これにはさすがの私も本気でショックを受けてしまい、
その日から一週間ぐらいは涙が止まらない鬱状態に陥ってしまった。
同時に自分を励ますべく同じ病気の患者さんのサイトも暗記するぐらいに閲読した。
残念なことにおよそ半分ほどは力尽きてしまった方々のサイトだったが、
その方々のサイトは恐怖感を抱いて当時読むことができず、
生還された方のページを中心に閲読して、病気に対する知識を蓄えていった。
そこで私は一つのサイトと出会うことになる。
私と同じ病気で年齢も近く、2度の再発と闘っていた女の子のサイトだ。
直接お会いしたことはなく、コミュニケーションをとったこともなかったが、
すごく前向きなサイトで、何よりも天真爛漫な文体が病気の存在を全く感じさせず、
私も彼女のように底抜けにプラス思考でいつもいれたらいいのにな、と思ったものだ。
そして早く病気が治ってこんなに頑張っている彼女に幸福が訪れてほしいと願っていた。
ただ、私が退院したあたりから日々の記録の更新が途絶えてしまう。
そして昨年の秋、元気にされているかなと久しぶりに訪問してみると、
サイトに開設されていたブログに彼女が著したこの本が紹介されていた。
『17歳にもどりたい』
本書は7年にもわたって病魔と闘い続けた著者による赤裸々な闘病記である。
著者が開設しているサイトでも闘病記は一部公開されているものの、
手記である本書ではネット未公開のプライベートな心情までもが率直に綴られており、
抑揚を抑えた文体が闘病生活のリアルさを更に浮き彫りにしていて胸が痛む。
青春真っ直中の17歳、青天の霹靂の如く彼女は白血病に襲われてしまった。
高校生の女の子の前に立ちはだかったあまりにも残酷な現実。
しかし彼女は弱音を押し殺し、絶対治るんだという信念を抱き続け、
どんなに非人道的な辛い治療にも持ち前のパワーで耐え抜いていった。
そして実兄からの骨髄移植も無事に成功し、念願の退院の時を迎える。
退院した後は夢のような日々が彼女を包み込み、誰にも奪われることのない幸福が続いた。
「この先何をしようと考えられることが嬉しくて、これからの未来にわくわくしていた」 (p59)
旅行を楽しみ、友人と語らい、行けずじまいにいた高校も再受験し、未来はバラ色...
誰もがそう信じていた矢先に、信じられない現実が再び彼女を襲う。
...白血病の再発だ。
そこでもう一度骨髄移植をするチャンスを彼女は得た。
二度目の移植だけあって否応なく"死"へのリスクは高まっていたが、
"ラッキーガール"な彼女は再び移植の壁を乗り越えることができ、
順調に回復してついには退院まで漕ぎ着けることが出来た。
「もう入院しなくていいんだ!これから何をしよう」 (p100)
この時すでに彼女は20歳になっていた。まさに「これから」という年齢である。
だが運命というのはどうしてこれほどまでに無情なのだろうか。
今度は髄内再発という悪夢が彼女を存在もろとも吶喊していく。
悪魔の悪戯としか思えないほどの酷薄な仕打ち。
ここまで運命に翻弄されてしまったら誰だって自分の人生に絶望したくなる。
でも彼女は負けなかった。0.00001%でも治る望みがあるのなら、その確率に賭けた。
今度こそは...今度こそは...
しかし彼女の身体は二度の移植でハイダメージが蓄積されており、
これ以上の強い治療は残念ながら期待することができなかった。
死の足音は一歩一歩と着実に近付いてくる。
暗闇の世界を想像するだけでも発狂してしまいそうだ。
死にたくない。死にたくない。あたしに命をくれ...!!
そんな彼女が絶望の淵で苦しんでいたとき、こんな言葉を手記に残した。
「こうして年を越せることが凄く嬉しい。
「生きている」って実感がわくから。「生きている」って幸せなんだなぁって思えるから。
「生きている」ということの有り難さを身に染みて感じることができるから」 (p157)
...彼女とはもう会うことが出来ない。
その現実に初めて触れたときは非常に哀しかった。
自分のことのように辛かったし、悔しかった。
文中に綴られている苦しみや悲しみが自分自身も身に染みてわかるだけに
余計にやり切れない思いでいっぱいになってしまった。
17歳から24歳...若さに溢れ、輝ける青春時代を彼女はずっと病気と闘っていた。
その事実を一人でも多くの方々に知っていただきたく思い、今回はこの本を皆様に捧げたい。
最近、世の中に余裕がなくなっているように感じる。
日々降り注いでくるニュースもどこか陰湿で殺伐としたものばかりだ。
でもよく立ち止まって考えてみてほしい。
「今、生きている瞬間」がどれほどスペシャルなものなのか。
毎日を平凡に過ごせることがどれだけ素晴らしきことなのか。
生きていくにおいて私たちが忘れてしまった大切なことを教えてくれる一冊。
ありがとう、うさこさん。どうか安らかに......






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