BOOK REVIEW 196 山本直治『実は悲惨な公務員』

ISBN 978-4-334-03443-6実は悲惨な公務員
山本 直治
光文社 2008-03-20
[光文社新書 340]

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週刊誌の記事はあらゆる人・組織に対するバッシングで毎号溢れかえっているが、
そんな中でも定番となっているネタが公務員へのバッシングだ。

確かに最近はけしからん公務員たちが官庁や地方自治体に多数生息しており、
おまけにそういった公務員たちが"イイ思い"をしているイメージが染みついているだけに
公務員へのバッシングは正義の名の下にいかなるものでも正当化される傾向がある。

ただこういった公務員バッシングに"ミステイク"はないだろうか。
断っておくが私は何も公務員の既得権益を擁護しているわけではなく、
官僚の不祥事や地方自治体の腐敗ぶりには怒り心頭している"しがない"一般市民だが、
そんな私から見ても「このバッシングの仕方は違うんじゃないか」と思うことが結構あるのだ。

例えば一連の年金問題で社会保険庁がこれでもかとバッシングされているけれども、
何も社会保険庁だけが悪いというわけでは決してないはずである。
政策を牽引した旧厚生省や「100年安心」などと嘯いた政党も責任の一端を担っているはずなのに、
なぜかノンキャリアの社保庁職員だけが集中的に叩かれているこの理不尽な現実。
やはりバッシングの仕方にどこか問題があると考えるのが賢明なのだろうか。

本書はマスメディア等で頻繁に行われる公務員バッシングに疑義を呈し、
公務員が置かれている"意外に悲惨な"実情に目を向けて、
その上で正しい公務員バッシングのやり方とは何かを考察した一冊だ。
悪意に満ちてこの本を解釈すれば、公務員の言い訳・屁理屈が満載で、
公務員が日頃どのような思考回路で職務を遂行しているのかが手に取るようにわかる。

基本的な構成としてはバッシングのネタにされやすい天下りや勤務実態などの事項を
世間に誤解されている点を指摘しながら、一つずつ丹念に検証していっている。
この流れにおいて一般にはあまり知られていない公務員にまつわる真実が次々と表出し、
中には意外と思われるものまであったりして非常に興味深い。

例えば天下りと聞くと誰もが「諸悪の根源である」とイメージングしがちだが、
本書ではすべての天下りが悪いわけではない、と世間とは正反対の主張を展開している。
「社会的に存在意義がある事業・組織に、余人をもって代えがたい適任者として選ばれた人が、
 職責に見合った待遇で着任しているなら別に非難されるいわれはないのではないか」 (p78)

というわけであり、下手すれば職業選択の自由をも奪いかねない。

仮に天下りがダメだとすれば民間へ転職していくしか進路はなくなってしまうのだが、
「公務員出身者に勤まるのか...」などといった公務員への偏見が依然として根強くあり、
そういった思惑を払拭しない限り天下り禁止は難しいのではないかという主張は傾聴に値する。

また「マスメディアとそれに煽られた世論が特定の問題を騒ぎ立てるのも、
 多くは一時的なものにすぎず、しばらくするとケロリと忘れ去られてしまう傾向がある」 (p180)

とあるように、マスメディアにおける過剰報道への視線も厳しい。

ある自治体Aの公務員が窃盗犯で捕まったという新聞記事が配信されると、
「公務員はけしからん」「自治体Aの責任者はどうなってるんだ」とバッシングが始まり、
自治体Aに勤務する他の公務員のブログも炎上する事態になることがあるが、
冷静に考えれば窃盗が公務員特有の犯罪というわけではなく、
捕まったのがたまたま公務員だったという話だけではないかという疑問が出てくる。
それを一般化させて無理矢理公務員バッシングへと昇華させていくのは、
日々真面目に勤務に励む善良な公務員の士気を無駄に下げかねることにもなりかねない。

では有益なバッシングをするためには結局どうすれば良いのだろうか。
その処方箋がエピローグで述べられているのだが、
いささか精神論に偏りすぎてしまってあまり有効とは言い難いのが残念なポイントだ。
「根気」で解決できるならばとっくの昔に公務員問題はすべて解決されているはずであり、
願わくばもう少し建設的かつ理論的な提言をしてほしかった。

公務員の実態を知りたいあなたに贈りたい一冊。

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