![]() | 環境経済入門<第3版> 三橋 規宏 日本経済新聞出版社 2007-09-14 [日経文庫 A36] by G-Tools |
米大統領選の民主党候補指名争いが熾烈を極めているが、
この大激戦振りを見ていると7年前のあの戦いを思い出す。
そう、訴訟にまで発展した現大統領:ブッシュと民主党:ゴアの戦いだ。
結果的にはブッシュが"曰く付き"ながらも勝利して大統領の座を射止めたが、
もしあの時ゴアが勝っていれば世界の歴史は確実に変わっていただろう。
ゴアならば京都議定書離脱という愚直な決断はきっとしなかったに違いない。
ゴアはドキュメンタリー映画『不都合な真実(An Inconvenient Truth)』に出演して、
2007年にはノーベル平和賞を受賞したことでも知られているが、
この映画でゴアは地球が限界に直面していることをユーモアを交えながら何度も強調している。
産業革命以降、人類は「大量生産,大量消費」のワンウェイ型社会をひたすら突っ走り続けた。
地球の限界を超えた環境負荷は生態系を乱れさせ、地球温暖化を促進し、
このまま放置していればそう遠くない未来に地球が破滅することは避けられない。
だからこそ人類はそういった"不都合な真実"から目をそらさず、
今すぐにでも地球に優しいライフスタイルへと転換していくべきではないか---
...全くの正論であり、疑義を挟み込む余地もないくらいなのだが、
現実に目を移してみると大人の事情も絡み合ってなかなか社会はエコシフトしていかない。
環境と経済はトレードオフであり、日常生活に差し迫った危機感もないからか
どうしても旧態依然な経済成長神話が幅を利かせてしまう。
高度経済社会において環境保全の概念は目障り以外の何物でもないのだ。
そこで環境と経済を両立させた環境経済学の必要性が生じてくる。
では環境経済学とは具体的にどんな学問なのか。その基礎を教えてくれるのが本書だ。
本書の体裁としては環境経済学の概説書であるものの、
前半は環境問題全般にわたるトピックスの解説に充てられていて、
日本の環境政策史や環境関連諸法についての基礎知識が得られるのは嬉しい。
昨年9月に最新版が発刊されたので、ポスト京都議定書などの最新の話題も収載されており、
この本を読めば環境問題の"今"が一通りわかるお得な一冊となっている。
特筆すべきは環境経済学とは何かにスポットを当てている点だろう。
新古典派だろうがマルクスだろうが既存の経済学は
「自然を切り開き自然資源を利用することによって
生活の満足度を向上させることができる世界」 (p180)
を前提としていて、このことを繰り返すことによって生活はどんどん豊かになっていく。
ところが地球の限界が見えてくると、今度は切り開けば切り開くほど逆に生活環境は悪化する。
そうなると今までの理論で経済システムを運営していけば、
地球が立ちゆかなくなってしまうことは火を見るよりも明らかであり、
「地球の限界と折り合って生きていくための新しい社会システムを構築」 (p183)
していく必要が早急に出てくる。そうしないと人類の生存環境は維持できない。
となれば文明人が享受している様々な利便性は捨て去らなければならないことになる。
24時間営業のコンビニ,いつでも食べられる弁当,自動販売機......
そもそも100年前にはこういった利器やサービスは存在しなかったはずであり、
たとえこれらがなくなったとしても理論的には生きていくのに支障がないはずだ。
ただ人間は弱い存在で、利便性をなくすのにはどうしても抵抗がある。
そこで思い切って発想をアゲアゲに転換してみてはどうだろう。
「その現実を苦痛として受け入れるのではなく、むしろチャンスとして受け止め、
自然と折り合える新しい地球文明を創造する人類最初の担い手になることに
誇りをもてば、新しい勇気も湧いてくるのではないでしょうか」 (p42)
歴史の転換点にいるという興奮を社会全体で共有すれば、
今よりももっとHappyにエコライフを満喫することが出来るのではないかということだ。
本書のデータにもあるように企業はCO2排出削減に非常に努力をしているが、
家庭に代表される民生部門ではまだまだ努力が足りない。
レジ袋をもらわない,出来るだけ公共交通機関を使う,生ゴミを堆肥として利用...etc.
そんな少しの心がけが結果として地球を救うことに繋がっていく。
「国民一人ひとりが、環境への負荷が人間の様々な活動から生じていることを率直に認め、
これまでの環境破壊型の経済社会の仕組みやライフスタイルを、
思い切って転換させていくことが必要です」 (p96)
地球を守るためにも、まずはこの一冊。


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