![]() | なぜ大人がDSにハマルのか? 細川 敦 ソフトバンク クリエイティブ 2007-12-28 [ソフトバンク新書 060] by G-Tools |
2007年のヒット商品番付で「ニンテンドーDS」が二年連続の横綱に輝いた。
ニンテンドーDSを知らないという人はおそらくいないだろう。
発売後3年足らずで国内の販売台数が2000万台を突破し、
(ファミコンですら10年かかったことを勘案すると驚異的スピードであることがわかる)
ソフトとして発売された「脳トレ」は流行語になるほどの国民的ヒットを記録した。
では何故これほどまでにDSはヒットし、老若男女問わず幅広く受け入れられたのだろうか。
そもそも数年前まではゲームと言えば子どもかオタクの専有物に過ぎなかったはずだ。
それがDSの登場によってゲーマーと一般人を隔てていた壁は脆くも崩れ去り、
今では家族間のコミュニケーションツールとしてゲームが再評価されつつある。
そんなDSの大躍進に隠された謎を分析したのが今回ご紹介するこの本だ。
確信犯的な経営戦略と運命的なパラダイムシフトの両軸が上手く絡み合い、
DSはゲームの枠を超えた「カジュアルPDA」 (p55)として市場に認知され、
携帯電話に比する一つのメディアとして様々な可能性を秘めた媒体へと進化していった。
「DSは、もはや日用品となり、ゲームは一般的な大人の生活に入り込み、
日常生活の一部になったのだ」 (p12)
本書ではDSが社会現象となるほどまでに成功した理由を大きく3つ挙げて、
(1.背景 2.ユーザーベネフィットの変化とクチコミ効果 3.経営戦略)
ゲームマーケティングのプロならではの独自の視点からアプローチされている。
今でこそ飛ぶ鳥を落とす勢いの任天堂だが、DSが世に出る前は迷走を続けていた。
ファミコンで得た爆発的なシェアをスーパーファミコンへシフトさせることには成功したものの、
次に出たNINTENDO64はプレイステーションに完敗し、続くゲームキューブも不調に終わり、
このまま飽くなき性能アップ競争に講じていても総合家電のソニーに勝てないのは明白だった。
ならば重厚長大型のゲーム思想から脱却して第三の道を歩むしかないのではないか…
…これがヒットの「背景」であり、以後DSはゲーム業界における従来の常識を次々と覆していくことになる。
(「経営戦略」など他の理由の詳細についてはぜひ本書を手にとって読んでいただきたい)
また本書はただDSに絞ってゲームビジネスを考察しているだけではなく、
第3章「一大産業化したゲームビジネスと苦悩するソフトメーカー」では
ゲームビジネスの抱える問題点とDSがもたらした負の遺産についても言及されている。
門外漢の立場から俯瞰しているとDSはもはや向かうところ敵無しといったようにも思えるのだが、
舵取りを間違えると途端にシェアが自沈してしまうほど脆弱な一面も裏にはあるのだ。
そこで重要となってくるのが第5章「DSがもたらす新ライフスタイルの可能性」である。
先ほどDSを「カジュアルPDA」と称したが、PSPが単なる総合家電であるのに対して、
DSは飽くまでも”ゲームを基盤とした”多機能PDAであることに着目したい。
本格的な機能を搭載しようと思えば、使い方がどうしても複雑なものとなってしまいがちだが、
それではお年寄りや子ども達が使えないし、そもそもカジュアルPDAにそこまでの機能は必要ない。
さらに言えば単に機能が付加されているだけではなく「楽しめる」要素が何よりも大切であり、
情報機器としては異色の「楽しめる」PDAとして、DSは唯一無二な存在感を日増しに強めている。
DSにしか出来ないコミュニケーション・スタイルこそがDSの強みなのだ。
「「DSらしさ」をゲームから拡げていき、日常の暮らしの中に実現していく。
そこにDSの未来と、多くのビジネスチャンスがある」 (p204)
ニンテンドーDSはゲームボーイの進化形ではない。
言うならばDSは全く新しいエンタテイメントであり、その魔力に世界中の人々が虜になっている。
DSにもっと酔い痴れたいあなたに本書をオススメしたい。


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