![]() | 素敵な夢を叶えましょう 桑田 佳祐 角川書店 1999-12-31 by G-Tools |
私がサザンのファンになった頃(今から10年前=1997年夏)、ちょうどサザンは低迷期を迎えていた。
シングルがそれほど売れるわけでもなく、テレビ出演や活動がメディアの話題を浚うわけでもなく、
そこにあったのは過去に一世を風靡して今は休火山となってしまった大御所バンドの姿だった。
桑田のインタビュー記事を辿ってみると1997年から急に自嘲気味な発言が多くなる。
前年までは「まだまだ若者には負けてられねー」といった気迫が発言からも感じられるのだが、
1997年になると「もう、いいや...」と白旗を揚げがちになってきて、
もっと攻撃的になってもいいであろう20周年の時も妙に自信喪失な発言が誌面を覆っていた。
さらに言えば当時は理屈に理屈を重ねたような小難しい発言もかなり目立っていた。
それはシングル『PARADISE』が発売されたときにレコード店にて配布されたフリーペーパーで
シングル盤の☆の意味(8cmシングルでは☆マークに穴が空いていた)を
南国の文化や自身の音楽的姿勢に照合させて延々と説明していたことからも伺えるし、
当時レコーディングされていた『さくら』のセルフライナーノーツ(『WHAT'S IN?』)でも、
細かすぎるといって良いくらいの仔細な定義付けが各曲に施され、
当時の私には"桑田佳祐=一秒の妥協も許さない職人的音楽家"観が見事に刷り込まれることとなった。
さて本書はそういった時期に綴られた70編のエッセイをまとめた単行本だ(残念ながら文庫化はされていない)。
『Tokyo Walker』に連載('98/2-'99/7)されていた桑田風語りおろしエッセイを完全収録し、
単行本用の特別編とポラロイド写真館を付け加えたファン垂涎の一冊である。
(余談ながらポラロイド写真館の写真の一つ一つには桑田による一言オチが付けられており、
桑田がいかにハイセンスな笑いを持っているミュージシャンであるかがわかる)
『「おっぱい」から「教育問題」まで、ぶったぎりのエッセイ集』と帯コピーにあるように
硬軟問わず幅広いテーマにおいて桑田独特の視点からばっさりと斬られているのが読んでいて気持ち良い。
そしてぶっちゃけトークが比較的満載ということも本書の特色ではないだろうか。
「男が女のオッパイをしゃぶるっていうのは、大いなるテレ隠しではないかと思う」 (p58)
「いま俺が中高生なら"常時右手骨折状態"」 (p85)
「俺としては挿入よりもキスのほうが断じて好き」 (p116)
などといったセクハラすれすれの居酒屋エロおやじトークが最初から最後まで全開で、
こういったエッチなトークをためらいなく素顔のままで話せる桑田佳祐はまさに男の憧れでもある。
また桑田が音楽的な戦略を語ったり苦言を呈している貴重なエッセイを収載されていることにも注目したい。
FC会報の代官山通信や音楽雑誌のインタビューではほとんど語られない攻撃的な愚痴トークが随所に散見され、
当時の桑田が音楽的に切羽詰まった状況であったことが今読むと痛いほどにわかってしまう。
さらにファンの間からは悪名高い桑田の"舌"についてのマニアックな考察も綴られている。
実は私と桑田佳祐の"舌"には共通するところが結構あるのだが...
「醤油にワサビをたっぷりと溶かしてさ、ドロドロの"自家製ソース"を作って、
そこにネタを浸して食べたいんだよね」 (p52)
その通り!(児玉清風に)
「まず熱い麺に平然と冷たいモヤシをのせる店はダメね。
俺はモヤシ・フリークでもあるから許せないのよ」 (p139)
その通り!!(アタックチャンス風に)
桑田のエッセイ集の中では最もおもしろい内容となっているので、
サザンオールスターズのファンで桑田佳祐に陶酔する者ならばまさに必読書だ。
"好きにしていいのよ"な一冊。


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