![]() | 夜明けを待ちながら 五木 寛之 東京書籍 1998-12-25 by G-Tools |
今から8年前の春。私は15歳の少年だった。
でも普通の15歳とは何かが違っていてそんな自分にいつも辟易としていた。
どう頑張っても周囲と上手く溶け込むことが出来ないのだ。
何気ないほんの少しの言葉が大きな凶器と化して胸を突き刺していく。
余計な電波をもキャッチしてしまう強すぎる自分の感受性に嫌気がさし、
まるで真空管に入れられたかのような息苦しさを来る日も来る日も感じていた。
念願叶って入学した高校も初日の段階から違和感を感じてしまって、
教室にいるだけで何度も何度も息が詰まりそうになった。
別に誰に何をされたわけでもない。成績が悪かったわけでもない。
だけど自分という存在をどう公に対峙させて良いのかが全くわからない。
そもそも自分の存在って一体何なんだ?
まるで哲学者が机上の袋小路に入り込むかのように私は覚醒している時間をすべて思索に投じた。
思春期には誰しもが自我について思い悩むわけだけども、私のそれは明らかに半端ではなかった。
そしてある日、私を司るアイデンティティが「これはもうダメだ」ととうとう爆発してしまったのだ。
学校から衝動的に逃げ出したくなり、チャイムと共に一目散に校門を後にしていく自分。
そのときに行き着いた書店で偶然見つけたのが今回ご紹介する本書である。
本書は著者がDJを努めるラジオ番組でのトーク内容を活字化したもので当時はロングセラーとなった。
リスナーから寄せられた悩みに対して人生観に裏打ちされた懇切丁寧な回答が語られていく。
「生きる意味」や「少年と死」など掲げられたテーマはどれも重く難解なものだけれども、
当時の自分でもすらすらと読める平易さが私の心を鷲摑みにした。
五木寛之といえば言わずと知れた直木賞作家だが気取った素振りが全くなく、
優しく語りかけるように文体の一つ一つが敬体で綴られていて渇した闇を潤していく。
私は自分に迷っていた。他の子が当たり前のように出来ることが自分には難しく感じてしまい、
他の子が感じない些細な感情でも自分は読み取ってしまう。周囲と調和することもなかなか出来ない。
そんな自分は社会が産出した欠陥品なのか。他人より自分は劣っているのか。いや、そうではないはずだ。
だけど友達も先生も親も誰一人として自分の価値に気付いてくれない。
そんな私に世の中には多様な価値観があり、マイナスは決してマイナスではないことを本書は教えてくれた。
学校の先生がいつまで経っても黒板で教えてくれることのなかった"答え"がこの本には詰まっていたのだ。
そう気付いたとき、逆に私は学校ってなんてちっぽけなところなのだろうと考え込んでしまった。
また、本書と出会って活字の力というのもずいぶんと思い知らされた。
文法の規則下において言葉が配列されているだけで何の音声や映像も情報として現出していないのに、
どうしてこんなにも心が揺り動かされてしまうのだろう。
今年の集英社文庫「ナツイチ」のキャッチコピーは『ただ言葉が並んでいるだけなのに。』だが、
言葉に魂が宿る"言霊"という日本的概念は時として核兵器以上の威力を放つ。
あれから8年。いろいろな出来事があって今はまだ大学生だけども、
今の実りある読書ライフの原点はこの本にあるのではないかと私はふと思った。
『夜明けを待ちながら』過ごした8年、念願の夜明けの時がまもなくやってこようとしている。
忘れられない一冊。


はじめまして。
私も『夜明けを待ちながら』や『大河の一滴』に助けられて、夜明けを辛抱強く待っていた(あるいは現在もなお待っている)経験を持つ者です。10年ほど前に読んだこの本のことを改めて思い出し、そのときに感じたことを文章にしました。
Keiさんとは、9歳ほど年が違いますが、この本から感じ取ってていたことはどこか重なるような気がします。ご病気のことは、私が抱えていた病とは異なるのですが、どこか共感できるところもあります。
共感のあまり、いろいろ書かせていただきましたが、ありがたい出会いを感じたことを感謝して、文を結ばさせていただきます。
>ほめ屋さん
はじめまして。『AKEINS THE WATERS』を作っておりますKeiと申します。
この度はコメントしてくださり誠にありがとうございました。
『夜明けを待ちながら』はこのエントリーにも書きましたが、
私の読書人生の中でもキーポイントとなる一冊です。
教科書的な世界観しか知らなかった15歳の私にとってはある種の衝撃でした。
この本に触発されて当時は『生きるヒント』シリーズをすべて読んだ記憶があります。
『人生の目的』もハードカバーで買って、その中に書かれていた
「人生の目的は、人生の目的を探すことである」という言葉は今でも胸に響いています。
ほめ屋さんに”夜明け”が早く訪れることを祈っております。
こちらこそブログを読んで共感を抱いてくださることは至福の悦びですので、
とってもうれしくなりました。ありがとうございます!!!
これからも『AKEINS THE WATERS』をよろしくお願いいたします。