BOOK REVIEW 114 文藝春秋編『東大教師が新入生にすすめる本』

ISBN 978-4-16-660368-8東大教師が新入生にすすめる本
文藝春秋/編
文藝春秋 2004-03-20
[文春新書 368]

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東京大学出版会から『UP』という小冊子が毎月発刊されている。
岩波書店でいう『図書』のような小冊子(ちなみに大学生協では無料で入手可)で、
体裁的にはPR誌であるものの読み応えのある学術記事が満載の一冊だ。

この小冊子が毎年4月号に特集する恒例企画が一つある。
それが『東大教師が新入生にすすめる本』で、20年目を迎えた現在ではすっかり名物コーナーとなった。
東京大学の現役教官が自身の読書体験や生業とする研究領域から
新入生に読んで欲しい本の数々を解説付きでセレクトしたこのブックガイドは
東大生でなくとも読書生活を営むにあたり非常に指針となるものであり、
私も一回生のときは『UP』のこの特集を読んで随分と知的好奇心を刺激されたものだ。

さて今回ご紹介する本書はこの企画の10年分(1994-2003)がノーカットで収載されている。
実に約400ページの大ボリュームで、さすがに挙げられた本を全部読むわけにはいかないものの、
解説を読むだけでも学術的視野が拡がってゆく感がしてとても気持ちが良い。

こういったブックガイドはそれほど星の数ほど存在するが、
本書はスペシャリスト中のスペシャリスト達が寄稿しているだけあってかなり本気のセレクトとなっているのが特徴的だ。
いわゆる俗っぽい本はほとんど登場せず、専門的かつマニアックな本が半分程度を占めているので、
気休めに読みたい本を探しているならば本書はあまり向かないと言って良いだろう。

しかしアカデミックな世界に脳を丸投げしたいと思っているならば最強の本であることに間違いない。
最先端の研究をして確固たる業績を築いた教員の方々が推薦する本は説得力に満ちていて、
また解説もウィットに富んでいるので学生にとって学ぶべきところが多い。

「社会科学を学ぶためには、経験から言って、
 まず高校までに植え付けられた通り一遍の社会観・世界観を捨て去るべきである」 (p138)

「古典はひからびた教養の宝庫ではない。よい古典は永遠に切実な現代文学である」 (p255)

このように内容は申し分ないのだが、一つだけ苦言を呈したいところがある。
それは『UP』をそのまま転載したが故に検索機能が疎かになってしまっていることだ。
教員別の索引は巻末に一応付いているのだけれども、東大生でない限りはほとんど無意味な機能であり、
もっとジャンル別に編纂したりなどして紙上での検索機能を強化していれば、
さらに使い勝手の良い本へなっていたと思うと実に惜しい。

趣味で読む本は直感がモノを言うが、学術本は確かな評価を得たモノを読むのが堅実だ。
知的生活のはじまりにこの一冊を捧げたい。

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