![]() | 骨髄バンク 「一人のために」から「みんなのために」へ 十字 猛夫 中央公論社 1994-12-20 [中公新書 1219] by G-Tools |
白血病や再生不良性貧血などの血液難病から患者を救う骨髄移植----
骨髄移植推進財団(骨髄バンク)が発足して15年が経とうとしている現在、
ドナー登録者数は27万人を超え、バンクを通じた移植例数は8000例を超えた。
医療の進歩によって臍帯血移植や末梢血幹細胞移植などの新しい移植法が登場し、
化学療法の発展は移植に依拠することなく治癒させることを可能とした。
分子標的薬イマチニブの登場によって慢性骨髄性白血病が今や移植を必要としなくなったのは記憶に新しい。
しかし一部の急性白血病、重症再生不良性貧血などについては
未だに骨髄移植によってのみしか治癒の道が残されておらず、
そういった患者において骨髄バンクの意義はますます高まるばかりだ。
今回ご紹介する本は骨髄バンクについて体系立てて説明されたほぼ唯一の書籍である。
刊行年も若干古く、現在の状況とは相矛盾する記述も少なからず存在するが、
「骨髄バンク」の仕組みを総括的に理解する上においては重要な一冊といえるだろう。
骨髄移植とは病に冒された骨髄を致死量の抗ガン剤で徹底的に破壊し、
健康な人の骨髄液を輸血と同じように静注して造血を正常化させる治療法である。
が、誰とでも骨髄移植を出来るというわけではない。
白血球の血液型であるHLA型が合致していなければ基本的に移植は不可能だ。
(合致していないとその分だけ拒絶反応が強く起こってしまい時に致死的になる)
さらにHLA型が合致する確率は兄弟姉妹ならば25%あるものの、
全くの他人となるとその確率は0.0...%となってしまい、自力でドナーを探し出すのは現実的に不可能だ。
そこで骨髄バンクの存在意義が社会的にも認識されていくことになるのである。
本書の定義を拝借すれば骨髄バンクとは、
「誰に対しても骨髄を提供しようという意志の方、すなわちコモン・ドナーのHLA型を検査し、
共通のリストに登録し、その中から適応患者と適合するドナーを選び出し、
非血縁者間骨髄移植を公平に実現しようとするシステム」 (p129)
であり、医療側や患者側から独立した公的な第三者機関がその業務を受け持っている。
非常に残念なことではあるのだが骨髄移植をしたからといって必ず救命できるとは限らず、
また患者側に必ずドナーが見つかるという保証も今の時点ではない。
「骨髄バンクに登録するドナー候補数が五万~一〇万人以上になれば、
移植が必要な患者の約八〇%に、HLA適合ドナーが見つかると推定」 (p188)
と本書に記述はあるものの、27万人になった現在でもドナーが見つからない患者が多く存在している。
それほどHLA型というのは極めて複雑な人類の産物であり、
本書でもかなり専門的なHLAの話が中盤ぶち抜きで記載されているので詳しく知りたい方は必読だ。
私は骨髄バンクからの骨髄移植を実際に経験した8000人の中の一人であり、
その経験を語ることは私に課せられた社会的責務であると日々痛感している。
言葉で書くと簡単そうに見えるが、実際は一瞬の予断をも許さない非常に激しい治療であり、
戦争の前線で闘う兵士のように生きるか死ぬかの総力戦だ。
...やがて語れる時が来たら、私は完膚無きまですべてを語り尽くしたいと思っている。
骨髄移植に関する詳しいことは骨髄バンクのホームページをぜひご覧いただきたい。
あなたを待っている人がいる。あなたにしか出来ないことがある。メンバーが足りない。メンバーが足りない。
骨髄バンクを知る上で一度は読んでおきたい一冊。


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