BOOK REVIEW 108 奈良信雄『白血病を治す』

ISBN 978-4-06-257046-6白血病を治す ここまで進んだガン治療
奈良 信雄
講談社 1994-12-20
[ブルーバックス 1046]

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病気のことを深く知ることは病気を治癒へと導く上においてとても大切なことだ。
では病気に対しての知識を得たい場合、私たちは一体何をすれば良いのだろう。

近年はインターネットによって誰でも手軽に安価で情報を入手できるようになった。
確かに初歩的な知識を得るにはインターネットが最もコストパフォーマンスに優れているのだけれども、
専門的な知識を得たい場合はWebに浮かんでいる情報では内容的にも精度的にも少々物足りない。

そこで今度は本の出番がやってくる(グーテンベルクの偉大さに感謝)。
都会の大きな書店へ行くと一冊何千円もする医学書が所狭しと陳列されていて、
どの本にもWebには載っていない専門的な情報が濃い密度で収載されているわけだが、
いかんせん専門的すぎて一般人には理解することさえ非常に難しい。
医学論文となると特殊なケースのオンパレードで余計に難解さを極めるばかりだ。

となってくると患者にとってはもう少し内容を易化させた一般書レベルの本が必要となってくる。
今回ご紹介するのは専門的すぎず且つ読みやすい点で患者のニーズに応えることを可能とした新書だ。
白血病の病態について記述されたものとしては唯一と言って良いほどの新書で、
血液の複雑なメカニズムをユーモア交えた文体で紹介している。
タイトルこそ『白血病を治す』だが、前半はガン全般についても記載されていて、
ガンとは一体どんな病気なのかを理解するにおいて非常に役立つ一冊だ。

ただこの本の刊行年は1994年で、今となってはかなり古い本となってしまったのが残念でならない。
文学作品ならまだしも医学書の場合は10年以上も前の発刊本は"古典"の部類に入るだけに、
本文内の情報も現代の医療状況と照合させると適合しなくなっていることも事実だ。

だが人類の不可思議なメカニズムを知るには大変有用な構成となっている。
白血病の主たる治療法は化学療法で、強力な抗ガン剤が体内へ静注されるが、
なぜ抗ガン剤が白血病細胞に効くのかということになると明晰に答えられる人は少ない。
そこの基本を押さえておかないと、いくら難しい専門書を読んだとしても完璧に理解することはできず、
あわよくば"知ったかぶり"に陥ってしまう危険性も出てくるので、一般書を読む意義は極めて重要であると言えよう。

21世紀に入って分化誘導療法や遺伝子治療といった新しいスキルが医療現場に登場してきた。
そんな最新の医療技術について本書では当然のことながら触れられてはいないものの、
最終章にて"夢"として語られている箇所にその萌芽を垣間見ることが出来る。

「ここまで進んだガン治療」から13年。ガン治療は今日も日進月歩で進歩し続けている。
ガンについて手頃に深く知りたいあなたに贈る一冊。

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