BOOK REVIEW 107 塩野七生『マキアヴェッリ語録』

ISBN 978-4-10-118106-6マキアヴェッリ語録
塩野 七生
新潮社 1992-11-25
[新潮文庫 し-12-6]

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先日NHKスペシャルを見ていると、ある旅行会社の社長をカメラが密着していた。
その社長は「コストダウンと安全は両立できる」との持論を標榜し、
下請けバス会社に低賃金で仕事を請け負わせ、運転手に想像を絶する過重労働を強いて、
自分たちは汗を流さずに甘い蜜だけ中間搾取していたのが番組を見ていてやけに印象に残ったものだ。

儲かりさえすればその手段はなんだってかまわない---
ライブドアにせよこの会社にせよ「成金的な勝ち組」にはこのような傾向が特に強い。
しかし何も近代になって突然沸いてきた新興思想というわけでもない。
実はルネサンスの時代からこういったホリエモン的思想は存在していたのだ。

こういった思想は俗に「権謀術数」と言われるけれども、
この言葉を聞くとある思想家の名前が浮かび上がってくるのではないだろうか。
そう、イタリアの思想家:ニッコロ・マキアヴェッリである。
あるミュージシャンがヘヴィなロックソングの歌詞に
『マキアベリの書いた理想郷の世界は今の政治家にゃアイロニー』
と書いていたが、この「マキアベリ」こそニッコロ・マキアヴェッリのことなのだ。

今回ご紹介する本は『君主論』や『政略論』でお馴染みのマキアヴェッリの思想を
エッセンスだけ抽出した言わば"いいとこどり"な格言集で、
格言を一つ一つ引用した後には著者による詳細な解説が付け加えられている。

マキアヴェッリに関しては賛否両論があるだろう。
国語辞典で「マキャベリズム」という語を検索してみるとネガティブな意味が出てきてしまう。
(しかし実際は『君主論』でも権謀術数的な思想はそれほど色濃くなく、
 マキアヴェッリの思想は長い間世間に誤解され続けてきた)

確かに『君主論』などを読めば倫理的・宗教的見地からすると異議を唱えたくなるものがいくつかある。
が、一切の僻見を排してひたすら合理的かつ科学的に現実を見つめ続け、
激動の時代を生きる処方箋を示したマキアヴェッリの思想はもっと現代に見直されても良いのではないだろうか。

つまり倫理や宗教というある程度バイアスのかかった視座からいくら鳥瞰しても、
高度文明社会には上手く適応していけないのではないか、と言うことだ。
中核にあるエッセンスは21世紀である現代でも充分に通用するに違いないし、
「組織論」の原型は意外にもここに隠されている。

マキアヴェッリの思想に触れてみたい人に捧ぐ一冊。

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