![]() | <新装版>永遠の愛を誓って 二十歳で逝った成美さんの記録 安積 政子 藤保 秀樹 宝島社 2004-06-09 [宝島社新書 373] by G-Tools |
『白血病に負けない、負けさせない』
本田美奈子.さんの力強い歌声が印象的な「Amazing Grace」が
今日も公共広告機構のCMに乗せて街のあちこちで星を伝って響いている。
時は遡って今から20年前----
白血病がまだ「不治の病」であった時代に、ある少女がこの病と懸命に闘っていた。
主人公の安積成美さんは1986年10月、17歳のときに志半ばで白血病に罹患し、
2年半の長期にもわたる闘病生活の末、1989年3月に20歳という若さでこの世を去った。
本日ご紹介するのはそんな成美さんの青春が刻まれた思わず胸を打ってしまう一冊だ。
母親の日記と恋人との往復書簡を中心に本書は構成されており、
あまりにストレートな"生"への溢れんばかりの思いは時間軸を超えて心に迫ってくるものがある。
当時は今と違って患者に病名は告知されなかったので(現在はほぼ100%即日告知)、
病の正体を知らぬまま病状に一喜一憂する姿がどうしても私には心苦しく感じてしまう。
中でも恋人である藤保秀樹さんの成美さんに対する「愛」には理屈抜きで感動してしまった。
忙しい大学生活の中、下宿先の大阪から成美さんが入院している姫路まで毎週のように通い、
時間の許す限り一緒に病室にいるという優しさ溢れる行動はなかなか出来たものではない。
変わり果てた姿になっても、その「愛」は決して変わることがなく、むしろ二人の愛は深まっていく...・
藤保さんが綴った手紙のこの一節が二人の「愛」の真実を勇敢に物語っているのではないだろうか。
「マジで好きや。今さらこんなこと言うのも変かも知れないけど好きや。
今日のホンマに言いたいのはコレだけや」 (p125)
成美さんはどうしても行きたい学校であったため一年浪人して高校へ入学した。
さらに予期せぬ入院のために留年することとなってしまい、
一度目の退院時に復学したときにはクラスメイトと2つも年が離れていた。
普通の高校で2年離れているというのは精神的にも大きなハンデになると思うのだけれども、
将来有望な才媛でもある彼女はそんな壁を乗り越えてひたすら毎日を全力に生き、
大学生になることを夢見て親に隠れて病弱な身体に鞭を打ち受験勉強に励んでいた。
が、そんな彼女の思いも「再発」という魔の手が無情にも打ち砕いていく。
なかなか状態が好転しない苛立ちを抱え、ただ徒に時間が過ぎていくばかりの毎日。
少々長くなるが成美さんの思いが凝縮されている手紙があるのでここにご紹介してみたい。
1988年12月10日に藤保さんへ綴った手紙からの引用だ。
「私は四月から入院していろいろ悩んで苦しんで泣いて、でもがんばろうと思った。
学校の留年のこともあきらめたし、夏には退院できると思った。
でも、むだやった。もう先のこと考えるのは怖い。
信じてそれがくずれるのが怖い。私自身どうすることもできひんから、
できひんからだれに文句言うこともできひんし、だれもどうすることもできひん」 (p198)
直接的な記載はないが、この頃成美さんは治療不能のいわゆる末期にいた。
しだいに病状は悪化していき、白血病細胞が浸潤して内臓は破壊され、
血球減少による眼底出血によって失明し、耳までもが光を失ってしまう。
死の二週間前、成美さんは20歳の誕生日に藤保さんから指輪をプレゼントしてもらった。
しかし彼の姿も指輪も見えない。聞こえているかどうかもわからない。
それでもひたすら「ありがとう。ありがとう」と涙を流しながら彼女は喜んでいた...
...結局彼女は大学生にはなれなかった。あれだけ行きたいと懇願していた大学へは行けなかった。
でも彼女は自らに与えられた人生を誰よりもまっすぐに駆け足で生き抜いていった。
命と真面目さが何かと軽視される世の中、本書はとても大切なことを現代に伝えているような気がしてならない。
成美さんが自らの命を持って伝えた「生きる」ことの真意。「愛する」ことのカタチ。
実録だからこそ胸に響く哀しき愛の協奏曲。
愛と絶望が交錯する感動の一冊をぜひみなさんへもお勧めしたい。
あなたの「愛」は「愛」であると自信を持って叫べますか?


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