BOOK REVIEW 92 小笠原喜康『大学生のためのレポート・論文術』

ISBN 978-4-06-149603-3大学生のためのレポート・論文術
小笠原 喜康
講談社 2002-04-20
[講談社現代新書 1603]

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大学へ入ると数ヶ月以内に必ずといって良いほどレポートの課題が出される。
そして卒業時にはほとんどの学部で"卒業論文"という大作を仕上げなければならない。

しかしその割には「レポート・論文の書き方」を授業で教わることは少ないのではないだろうか。
むしろそれぐらいは出来て当然という風潮が暗黙の了解のうちにキャンパス内を支配していて、
せいぜい事務室等から紙切れ一枚の「注意点」が配布されるのが現状である。

なのでレポートをブログのノリで書いてしまったり、
論文のルールを理解せず書き殴ってしまう学生が多すぎると教授陣が嘆く結果となってしまうわけだ。
(考えてみれば教わってもないのだから間違うのは当然のことだと思うのだが)

本書はそんな"隙間産業"であるレポート・論文の書き方について綴った一冊だ。
主に文系学生に必修な基礎的事項が網羅されており、
この本をルールブックとして手元に置いておけば少なくとも単位を落とすことはないに違いない。

文芸作品(小説、エッセイなど)を書く場合は努力したから書けるというわけではなく、
そこには神の恵みとも言うべき才能が有意に関係してくるのだが、
論文というのは才能の如何は一切関係なく、訓練すれば誰でも書けるようになるスキルだ。

ここで注意しないといけないのは論文と文芸作品は根本的に書き方が全く違うことである。
私はここに読書日記的な書評を記しているがこれは論文ではない。
論文は限りなく透明な客観性を保持するためにかなり論理には厳格で、
参考文献なども事細かく明記せねばならず、しかもそこにオリジナルの主張を入れなければならない。

ただ先行研究をなぞっているだけではそれは単なる"作文"だし、
巧みに言葉を操って情緒的に訴えかけても論理性に乏しければ論文とはいえない。
執筆にあたっては「学問は、自分の理解を疑うことから始まる」 (p81) 心構えが大切なのであり、
「「常識を疑え」ということも、とても重要である」 (p103) わけなのだ。

また本書はご丁寧にも「文献の調べ方」や「ノートの取り方」までの模範例が記されている。
全体的に一冊が長編論文になるように構成されてはいるのだが、
はっきりいってお世辞にも文体的にはあまり上手であるとは言えない。
そもそも論文というのは型が決まっているせいか読んでいて(知的興奮は別として)総じておもしろくはなく、
そういった現実への自戒を込めておもしろい論文への模索も記していれば
もっと有意義な本になっていたかもしれないと思うと少々悔しい。

最後に著者はこれからレポートを書こうとする大学生へ次の言葉を贈っている。

「権威を無批判に受け入れたり、実験などの形式を真似て、
 論文の体裁を整えることにあまり心と頭脳を使わないでもらいたい」 (p217)

レポートを書く前に一読しておきたい一冊。

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