![]() | ウケる技術 小林 昌平 山本 周嗣 水野 敬也 新潮社 2007-04-01 [新潮文庫 こ-41-1] by G-Tools |
何かと「格差」で括られがちなしがない現代ニッポンにおいて知られざる「格差」が一つある。
それは私たちの日常生活に潜む「コミュニケーション格差」だ。
コミュニケーション力がままならないと人間関係が円滑に構築できないどころか
趣味や仕事にも影響をきたす様になり、結果的に生涯所得や結婚における「格差」までをも助長させてしまう。
バラ色の人生を歩めるかどうかはまさにコミュニケーション力に懸かっているといっても過言ではないのだ。
ところがこのスキルというのは教科書的に教わる機会が全くと言って良いほどない。
巷に溢れているコミュニケーション力を扱った本のページを捲ってみても、
「楽しい思いをする」というよりも「不快な思いをしない」ことに重点が注がれていて、
会話における夢も希望も創造もないリスクヘッジ法の羅列に終始している本が多かったのではないだろうか。
本書はそんな既成概念を打ち破る一歩踏み出した新しいタイプのコミュニケーション教則本だ。
「笑い」をいかにして会話に組み込むかにスポットを当て、
ウケるための即戦力になる技術が体系立てて整理されている。
しかしこの本に書かれていることを一字一句違わず実際の会話に応用させたからといって
必ずしも笑いが取れるとは限らないし、むしろ場を凍てつかせることにも繋がりかねない。
それほど「笑いをとる」=「ウケる」とは五感をフルに使った難しいスキルであり、
人間性や社会性が入り交じった総合的なコミュニケーション能力が問われてくる。
「コミュニケーションは、プロレスである」 (p132)
「コミュニケーションは、サービスである」 (p158)
ことを認識していないとやがて会話に齟齬が生じてくるだろう。
さてこの本で特徴的なのは決定的に不利な状態(周囲が知らない人、すでに空気が重いetc.)を
好転させるためのスキルの解説にページがたくさん割かれていることである。
周りがあまり仲の良くない人達で、すでに自分は一回滑ってしまって全員がそっぽを向けている...
そんな四面楚歌の状態を清浄化して更に「笑い」の場にまで昇華させるには精神的な強さも必要とされてくる。
「「行かない」ぐらいなら、スベったり、相手の気分を害したりした方が
まだはるかに前進しているということです」 (p44)
従来型の本では「相手に不快感を与えない」ことがまず第一の到達目標であったわけだが、
本書では時に相手を不快にさせるような言動も積極的に推奨されている。
しかしそれは後に「ウケる」ためのスキルで解毒ケアされることが前提であり、
言うならばその「毒」は「爆笑」の触媒になっているというわけだ。
そしてただ笑わせることに終始していないのも本書の好感ポイントの一つである。
「ウケる技術は、(それは毒舌という形態をとっても、シニカルな表現であっても)
愛をベースとすべきなのです」 (p241)
愛がない笑いは単なる侮辱である。だからこそ独りよがりになっていてはいけない。
空気を読みながら、時に空気をずらしながら、人に優しくバリアフリーに「笑い」をとっていくことが
何よりも大切であることを常に肝に銘じていたいものだ。
「毒と薬のリップサービス」 (p158) に溺れたいあなたにイチオシの一冊。


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