![]() | 笑いの経済学―吉本興業・感動産業への道 木村 政雄 集英社 2000-01-23 [集英社新書 12A] by G-Tools |
吉本興業という会社を知らない人はおそらくいないだろう。
大阪を拠点に置く言わずと知れた"日本最大の芸能プロダクション"で、
会社の規模的には決して大企業というわけではないのだけれども、
知名度と影響力に関しては全国的に絶大な力を誇っている急成長企業だ。
(それは今週刊誌を騒がせている吉本興業を巡る黒い疑惑が
テレビ・新聞等では一切報じられないことからも伺える)
特に大阪での吉本の存在感は圧倒的で、生活レベルにまで吉本イズムは浸透している。
このように一般社会への影響力まで併せ持つ芸能プロダクションは他地域にはないのではないだろうか。
本書は当時吉本興業の常務取締役であった著者が吉本流の経営ノウハウをまとめ、
「笑い」を軸とした組織論・地域再生策・景気回復策を提言した一冊である。
タイトルに「経済学」とあるが経済書特有の回りくどさは全くなく、
全体的なテイストはお笑い企業のトップらしくスポーツ誌のコラム並に軽い。
最も印象的なのはエンターテイメント産業を代表する位置にいる企業なのにも関わらず、
総研やマーケティング的な要素を「ずっこい」と言い放ち否定していることだ。
この業界では売れるために完璧なマーケティングを立てることはもはや必須要素だが、
だからといって必ずしも社会に受け入れられてヒットするというわけではない。
むしろ"想定外"の売れ方をすることの方がこの業界には多く、
お笑いの世界では特にその傾向が強いのではないかと"いち視聴者"として感じている。
「市場では今、こういうものが求められているから、
こんなものを出そうという体制はわが社にはありません。
まず思いが優先しないとだめなんです」 (p144)
また関西経済をいかにして復興させるかという問題にも本書は積極的に触れているが、
提言そのものが吉本興業という会社の枠に捕らわれすぎている感があって空回りが否めない。
もう少し大局的な視点から関西経済の未来を論ずることは出来なかったのであろうか。
最後には当時招聘活動をしていた大阪オリンピックへの熱い思いが綴られている。
結局大阪にオリンピックが来ることはなく2008年は北京で開催されることになったが、
今大阪市はその処理に莫大な借金を注ぎ込んでいて、財政はすでに夕張状態と化している。
東京オリンピックが招致されるか否かが都知事選の争点となっているけれども、
都民の皆様にはぜひ夢洲・舞洲・咲洲の惨状を見ていただきたい。確実に思いが変わるはずだ。
吉本興業とはどういう会社かが一通りわかる一冊。


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