BOOK REVIEW 81 桑田佳祐『ロックの子』

ISBN 978-4-06-184043-0ロックの子
桑田 佳祐
講談社 1987-08-15
[講談社文庫 く-18-1]

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桑田佳祐はインタビューが実に好きなミュージシャンである。
ライブやテレビには出たがらない桑田もインタビューだけはどうやら例外のようで、
新曲発売時に数十冊の雑誌や全国各地のラジオ局のインタビューに答えるのはもはや慣例だ。

ファンクラブ会報で連載されている『オールスター讀物』も初期はエッセイを掲載していたのに
いつの間にか最新インタビューが収載されるコーナーとなってしまった。

本書は1982年~1984年に雑誌等で発表されたインタビューを再構成し、
ロックスター:桑田佳祐の生い立ちから現在(※当時)の活躍までを一冊に収めたファン垂涎の書だ。
ちなみにタイトルとなっている『ロックの子』はサザン未発表曲のうちの一つとなっている。
(作詞・作曲者不詳となっているものの明らかに桑田が作った曲。単行本発売は1985年2月。)

前半は少年時代~大学時代を時系列順に回想していて、
幼き頃から音楽に囲まれてとにかくスケベだった桑田の姿を行間から垣間見ることができる。
今と違って随分と図太い神経を持った少年・青年時代を後のロックスターは過ごしたようだ。

そしてイーストウエスト'77を経てサザンはメジャーデビューしていくわけだが、
このコンテストに出るきっかけを作ったのが実は元メンバーの大森隆志。
あのとき大森がイーストウエストの申込用紙を持ってきたからこそサザンはデビューが出来たわけだ。
故に大森が脱退したときのラジオ『夜遊び』でもこのことを頻りに桑田は強調して感謝の意を述べている。

このエピソード以外にも本書ではサザンがベターデイズを経てデビューするまでの経緯が
教科書的に詳説されており、サザン史を語る上での資料価値は高い。

さて後半は主に初期~中期前半のサザンの活動についての述懐を中心に構成されている。
特筆すべきなのは『ただの歌詩じゃねえか、こんなもん』同様に攻撃的な発言が目立つことだ。
"これだけ自分は他のミュージシャンよりも才能が突出しているのに
 どうして日本の音楽界もリスナーも俺のことを理解してくれないんだ!"
という苛立ちと葛藤が随所に滲出している。

「まだまだ今はわかんねえバカが多いだけって気持、強いよね」 (p139)

ヒットチャートに入るようなガキ相手の歌謡曲なんてクソだと言わんばかりの気持ちが爆発し、
その気持ちはだんだんサザンの本格的な海外進出へと軸足が向けられていく。

「[インタビュアー:萩原健太] やっぱりアメリカで勝負したい?
 [桑田佳祐] 全部そこに行きつくんじゃないのかなあ。そうじゃない人もきっといるだろうけど、
 俺たちにとってはそれがいちばんハデだと思うし、いちばん本能的だと思うんだよね」 (p179)

ビルボードのチャートに入らないとバンドをやってる意味がないとまで言い切った当時の桑田は
このときすでにシングル『Tarako』で全英詩+海外レコーディングを敢行していた。
そのきっかけはやはりマニアの間で語り継がれるこのエピソードにヒントがあるのではないだろうか。

ある日、渡米した桑田が有名エンジニアのボブ・クリアマウンテンに
発売されたばかりの『綺麗』を試聴してもらう機会を持った。
そこでボブ・クリアマウンテンから端から勝負にならない旨の評を聞かされて桑田はショックを受ける。

「彼が言うには、『綺麗』の場合、音は一発一発クリアに録れてる、と。
 だけど、バンドのね、熱っていうか、
 そういうものをうまく拾ってないんじゃないかって言うわけ」 (p188)

『綺麗』が自信作であったが故にこれは本人にとってかなりショックな出来事であったらしく、
次作『人気者で行こう』が全編にわたって革新的でハイテンションなアルバムになっているのは
桑田流"ボブ・クリアマウンテンへのリベンジ"を如実に物語っている。
そしてアルバム発表&野外ツアー終了後にいよいよ敵陣へと乗り込んでいったわけだ。

あれから20年--

"ロックの子"は"ロックの神"へと神化し、ポップモンスターの名を恣にした。
あまりにサザンが経済的にも巨大化しすぎたため今は利害に雁字搦めにされてしまっている感があるが、
若き日の桑田にはサバイバルナイフを振り回しそうなほどの危険さと貪欲さが溢れ出ていたことを
本書は刊行から20年経った今でも後世の人々に伝えているように思う。

秋の御空に山婆かおる一冊。

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