![]() | 医療の値段 -診療報酬と政治- 結城 康博 岩波書店 2006-01-20 [岩波新書 新赤版989] by G-Tools |
以前、BOOK REVIEW 56 真野俊樹『入門 医療経済学』にて
医療政策には「医療経済学」的なアプローチが早急に必要とされている現状をご紹介した。
今回ご紹介する本書は言うならば「医療政治学」的なアプローチから医療界にメスを入れた本で、
医療マネーを巡る政治的背景や医療の値段の裏側に迫った意欲作だ。
医療は30兆円が動く"知られざる"官製巨大市場で、
今後高齢化が進展していくにつれてその規模は更に拡大されていくのは必至だ。
当然そこには様々な利権や政治的思惑の魔の手が複雑に絡んできて、
保険制度や診療報酬を悪用した汚職なども後を絶たない。
さて、医療の値段というのは「診療報酬」に事細かく規定されている。
「診療報酬」を基にして医療の値段が算定され、巨額のマネーが各所から動いていく。
ではその「診療報酬」は一体誰が決めているのかということになるとこれが意外と知られていない。
「診療報酬」を直接的に決めているのは国会でも内閣でもない。
中央社会保険医療協議会(中医協)という厚生労働大臣の諮問機関だ。
ここを経由しないと法律的にも医療政策が動いていかないため、
30兆円もの巨額のカネを揺るがす強大な権力を中医協は有していることになる。
が、扱っている事柄の専門性が非常に高く、
議事録を読んでも我々のような一般人が理解することは正直言って難しい。
新薬の価格設定や新しい医療技術の妥当性などは
綜覧的な医学的知識がないと適切な判断ができないためまさに医師の独壇場となっている。
故に医療側と患者側との齟齬が生じているのも事実で、
(中医協にはつい最近まで患者代表は一人もいなかった。現在は1名。)
例えば今問題となっているいわゆる「リハビリ180日問題」も
患者側の意向を上手く汲み取ることができなかった弊害の事例の一つであろう。
また中医協の周囲には様々な医療系団体が鉄の壁を敷いている。
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会...
本書ではこういった利益団体のあまりオモテになっていない歴史を総括していて、
日歯連と自民党を巡るあのスキャンダルについても一章を割いて改めて詳説している。
一つ本書の難点を指摘するならば、論点が定まらずに論旨展開が浮遊しており、
結局この本で何が言いたいのかがよくわからないところだ。
もう少し深く突っ込んでも良かったと思うし、やはり何よりも著者自身の政策提言が欲しかった。
医療とお金の輪郭がほんの少しClearになる一冊。


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