BOOK REVIEW 61 三田誠広『永遠の放課後』

ISBN 978-4-08-746052-0永遠の放課後
三田 誠広
集英社 2006-06-30
[集英社文庫 み-12-14]

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「最初に仲良くなった人」というのはどの場面でも後々まで印象に残るものだ。
その人がずっと友人であり続けるというわけでは決してないのだけれども、
やはり"最初"というインパクトがいつまでもココロに残存していく。

この物語に出てくる主人公:笹森ヒカルは転校先の中学校で或る女の子と出逢った。
その子は学級委員を務めていた中島紗英で、紛れもなく「最初に仲良くなった人」だった。
しかし彼女は後に親友と呼べる関係となる杉田春樹のガールフレンド...

だけども大人の世界にありがちな愛憎トライアングルになることはなく、
3人は放課後に杉田の家によく集まって互いに仲良くギターを奏でていた。
そして合間に勉強のこと、進路のこと、将来の夢などを語り合ったりして
その"友情"たるものをより強固な絆へと昇華させていった。

時は流れて大学時代。音楽好きが高じて軽音サークルに入ったヒカルは
あることをきっかけに人気バンドのボーカルにスカウトされることになる。
その人気バンドはボーカルが亡くなり(一説には自殺)、
メンバーの一人も下半身不随になってしまったという曰く付きのバンドであったが、
ヒカルの存在によって奇跡といっても良いくらいの輝きを取り戻す。

ヒカルはステージの上では同じメンバーであるヒミコに恋をしていた。
もちろん歌の世界に魂もろとも入り込んでの恋なわけだけれども、
対するヒミコもヒカルを激愛し、その愛し方は今にも炎上しそうなほど剣呑としていた。

しかしリアルに考えてみると僕(=ヒカル)が本当に好きなのはあの子しかいない。
そう、中学の時に「最初に仲良くなった」女の子で今は違う大学で学んでいる紗英のことだ。
紗英とは大学入学以来ずっとメールをし続けてきた仲で、会う毎に心が揺れてしまう。
でも紗英を好きになることによって親友の杉田を傷つけることになってしまうのも怖い。

友情を取るか?それとも恋愛か?そこでヒカルが下した決断とは...

奇抜な展開は一切なく(強いて言えば強引さは少し残るが)、
「想定内」のストーリーの流れで良く言えば王道、悪く言えば凡庸な作品だ。
メインはヒカルと紗英の恋の行方なのだけれども、
実は人気バンドのメンバー同士の愛憎劇や両親の存在も伏線として敷かれている。
ただその強度が脆く、結局storytelling的に相殺されてしまってるのが残念だ。

春の陽気を吸収しつつある図書館の一室で読んでいたい一冊。

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