![]() | 憲法九条の戦後史 田中 伸尚 岩波書店 2005-06-21 [岩波新書 新赤版951] by G-Tools |
『1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。』
『2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。』
これは非常に有名な日本国憲法第九条の条文だ。
「九条」とあればOS劇場ではなく平和憲法を誰もがイメージするように
今ではすっかり日本人のDNAに刻み込まれた感がある。
その憲法が近年、論争の的となっている。
改憲、護憲、加憲、論憲、創憲、廃憲...
どの主張もそれなりの言い分があるわけだが、
ここで九条の歴史を改めて振り返ってみようというのが本書だ。
本書では日本国憲法が施行されて以来、
九条がどんな運命を辿ってどんな形で国民と共に歩んできたかを
当時の新聞記事を基にアンソロジー的に編纂している。
言うならば憲法九条の自叙伝みたいなものだ。
憲法についての書物というのは高度な論理が展開される学術本か
センセーショナルに訴えかける大衆本のどちらかに大別されるのだが、
本書は教科書的に事実が淡々と記述されており、
意外に見過ごしていた基礎知識を再確認できる点で有用であるといえよう。
印象に残ったのはエピローグで語られる非暴力平和隊(NP)の存在だ。
世界を見渡してみると特に中東地域では未だに紛争が絶えない。
今のイラク戦争の惨状が実によく物語っているのだが、
民族や宗教、貧困などの構造的な問題に根ざした紛争を
軍事力で抑圧するのは逆効果でしかない。
「武力による平和」はもう過去の遺物なのだ。
ではどうすれば良いのか。ここで九条の精神が生きてくるのである。
「積極的に平和を創る」。つまり非暴力で紛争に介入し、
非暴力で平和な環境を整備するという汗を流す平和活動だ。
ただ戦争反対とシュプレヒコールをあげる消極的な平和活動とは違う。
世界の中心で、平和を叫ぶ---決して非現実的な夢物語ではない。
こういった非暴力的手段による紛争解決は世界のNGOの潮流になりつつある。
なのになぜ国家は何度失敗してもこれほどまでに軍事を過信するのだろうか。
「国民国家の装置である憲法の中にありながら、
九条は国家を超える可能性と豊饒さを持っている」 (p245)
現実に法を合わせるのではなく法に現実を合わせていかないと
文明は発展していかないし、同じ悲劇を繰り返すだけだ。
九条の在り方について真剣に考えてみたくなる一作。


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