![]() | 左腕の猫 藤田 宜永 文藝春秋 2007-01-10 [文春文庫 ふ-14-7] by G-Tools |
「猫は勝手な生き物や。人間やったら、腹立つけど、
不思議と猫の我が儘は可愛い」 (p165)
私は猫を飼ったことがないので何とも言い難いのだが、
道行く猫を瞥見したり巷に溢れる風評を耳にする限りは
どうやら猫は犬と違って一筋縄ではいかない動物のようだ。
もちろんステレオタイプ的に猫の性格を当てはめることはできない。
また盲導犬や警察犬は存在しても盲動猫や警察猫は存在しないように
猫と人間は単なる古典的な主従関係にも決して収斂はされない。
そう、現実の猫はキティやミミィとは似て異なるものなのだ。
本書には猫をテーマに据えた六編の物語が収録されている。
ただストーリー的に猫がメインというわけではなく、
男女の移り気で微妙な息遣いを猫の存在が補完しているといえば妥当か。
最初に引用したのはその中の『葬式の猫』という物語の1シーンだが、
なんとこの猫はあろうことにも飼い主を殺めてしまう。
生前、その飼い主は前述の言葉のように猫について評しており、
愛する猫に殺められ人生を閉ざされた飼い主の心を思うと複雑だ。
全篇に亘って社会的地位のある中年男性が主人公となっていて、
不倫やセックスフレンドなど様々なカタチで若い女性と情交する。
その姿が時に悲哀に満ちているように私には感じられて、
中年男の持つ「需給不均衡な性」が生々しく埋められていた。
乳ガンを患った妻が突然娘の家に身を寄せる『永遠の猫』は
まさに「熟年離婚」の現場そのものであり、夫はひたすら狼狽する。
そんな姿を飄々と塀の上から見つめる一匹の猫。
憎みたい気持ちでいっぱいだが、どこか憎めない---
人生の先輩である団塊の世代諸氏ににゃあにゃあ捧ぐ一冊。


本屋さんで気になってた一冊です。
昔、藤田宜永の著作を読んだ時、この人のテーマ設定って面白いかも!って思ったものでした。情けないことにそれ以来読んだことがないのですが、クラシック好きらしく親近感を覚えます。
そうですね。この本も「大人の恋模様」を描いた作品なのですが、
そこに「猫」の存在を絡ませることによってさらに味のある物語になっていて・・・
円熟した恋は年齢を重ねないと楽しむことはできませんけど、
藤田宜永さんの作品はそんな自分に疑似体験をプレゼントしてくれました。
ぜひまた感想聞かせてください!