BOOK REVIEW 49 浜井浩一 芹沢一也『犯罪不安社会』

ISBN 978-4-334-03381-1犯罪不安社会 誰もが「不審者」?
浜井 浩一 芹沢 一也
光文社 2006-12-20
[光文社新書 281]

by G-Tools


「日本の治安は近年ますます悪化の一途を辿っている。
 少年犯罪も低年齢化かつ凶悪化が進んでいる。
 だからこそ犯罪を防止するためにも地域コミュニティの復権が必要だ。」

一見してもっともなことを書いていそうな文章だが、実は全部ウソである。
もう一度書こう。私は全くのウソを捏造してここに書いてみた。

「何をバカなことを言っているんだ」と思う人もいるかもしれない。
そんな人にこそぜひ本書を手にとって真実をこの目で確かめて欲しい。
いかにマスコミによるアジテーションに踊らされているかがわかるはずだ。

本書では第一章から世間の常識に対して鋭い刃を突きつけた。
謬見を一切排して常識を疑い、"グラフ"をもう一度精読していったのだ。

治安悪化の論拠として犯罪認知件数の急増と検挙率の低下がよく挙げられる。
しかし認知件数が急増したのは桶川ストーカー事件(1999)を機に
民事領域にも積極的に介入してどんどん犯罪認知をしていったためであり、
検挙率低下も職務量増加による相対的な現象に過ぎない。
事実、殺人事件の認知件数は穏やかな減少傾向を示している。
(精細なロジックは本書を参照されたい)

さらに少年犯罪について言えばむしろ高齢化が進んでいるし、
地域の絆が強固だったと言われる古き良き昭和30年代のほうが
今より遙かに凶悪犯罪が多く、想像を絶する凄惨な事件が相次いだ。
つまり数十年前に比べて日本の治安が安全になっているのは明白なのだ。

なのにも関わらずどうして皆が皆「治安悪化」を叫ぶのだろう。
実際に子どもが第三者に誘拐されて殺害される可能性なんて
確率にすれば0%に極めて近いぐらいなのに
なぜこれほどまでに大がかりで強固な防犯ムーヴメントが起こるのか。

本書では劇画的なマスコミ報道のあり方にその答えを求めている。
「特定の事件を特異な事例としてではなく、
 社会全体の歪みの象徴として取り上げていく」 (p61)

洪水のように降り注ぐセンセーショナルな報道は人々の認識を狂わせた。
第二章・第三章では思想史・文化史の観点から
なぜ人々に治安悪化神話が流布されたのかを解きほぐしている。

そして法務省の元官僚が実際に刑務所へ赴任した体験を基に
刑務所、そして厳罰化の行く末の真実を暴いたのが第四章だ。
まともに服役できる受刑者がほとんどおらず、
"セーフティーネットの最後の砦"と化している報告は衝撃的の一言に尽きる。

徒に不安ばかりを煽っても生きにくい世の中になってしまうだけで、
リスクとハザードを正しく認知して犯罪と対峙する姿勢こそが必要なのだ。

「犯罪は正しく恐れ、その上で、効果的で副作用の少ない、
 人々の生活に優しい犯罪対策を考えるべきであろう」 (p233)

あなたの揺るぎない固定観念が雲散霧消するであろう一冊。

誤字脱字が大変目立ったのが良書なだけに惜しい。
内容に恥じないような正確な校正を編集部に願いたい。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: BOOK REVIEW 49 浜井浩一 芹沢一也『犯罪不安社会』

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.akeins.com/books/mt-tb.cgi/49

コメントする

2008年10月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のブログ記事

最近のコメント

Creative Commons License
このブログのライセンスは クリエイティブ・コモンズライセンス.
Powered by Movable Type