BOOK REVIEW 44 パヴェーゼ『美しい夏』

ISBN 978-4-00-327142-1美しい夏
パヴェーゼ/著  河島 英昭/訳
岩波書店 2006-10-17
[岩波文庫 赤714-2]

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タイトルに惹かれて思わず衝動買いしたのがこの一冊。
戦後の現代イタリア文学を代表する作家の"わけあり"な作品だ。

『美しい夏』といういかにもサザンっぽいタイトルではあるものの
実際はいわゆるsummerlikeな物語では決してない。
むしろ男女の陰翳な人間関係を抉り出した戦中色の濃い一作で、
文中の随所随所に暗澹たるこの時代特有の趨勢が影を落としている。

この作品はもともとファシズム体制下の1940年に執筆され、
刊行されたのはそれから9年後の1949年のことだ。
イタリア最高の文学賞であるストレーガ賞を受賞したのはその翌年のこと。

なぜ10年近くも発表されなかったのかについては
巻末に収載されている訳者自身による解説を参照されたいが、
政治的な理由の他に文学的な事情もどうやら重なっているようだ。

物語は16歳のジーニアと19歳のアメーリアの二人の少女が
大人な体験を通じて少女から「オンナ」へと成長していく過程を描出している。
今と違って「ここにあるもの」以外何もなかった時代。
ものすごく狭い世界の中で偽りの感情に翻弄され、
孤独と愛に傷つく二人の姿を思うと不憫でならない。

この二人は時に女同士でも愛し合う。
『美しい夏 (La bella estate) 』というタイトルは
本来は『カーテン (La tenda) 』と名付けられていたそうだが、
それでは生々しいということで書き改められたのもそのためか。

レズビアンの愛も大人の男との愛もどこか哀しい。
潤いの一つもない「愛」。でもそれが彼女たちのすべて。

雨の降る午後、レトロな珈琲館で嗜んでいたい一冊だ。
イタリア文学はなかなか一般にお目にかかることはないので、
今回岩波文庫に収載されたことは大いに歓迎したい。

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