![]() | 北朝鮮「虚構の経済」 今村 弘子 集英社 2005-06-22 [集英社新書 296A] by G-Tools |
北海道の夕張市が去年ついに財政再建団体入りを果たした。
税収が10億円しかない自治体が私利私欲を尽くして暴走し、
採算性を完全に無視してハコモノを造り続け、粉飾決算を繰り返した挙げ句、
最終的には借金が約360億円にまで膨れあがってしまったのだ。
全く民主主義が機能していない実に恥さらしな自治体である。
議員はおいしい蜜を吸うために業界と癒着しながら行政を進め、
職員は粉飾決算という犯罪行為を組織ぐるみで行い、
市民も政治には無関心で権力の暴走を許してしまった。
こういったどうしようもない「夕張予備軍」は他にも日本中に存在するが、
夕張をも遙かに超える規模で財政が破綻している「国家」が近くにあった。
そう、北朝鮮だ。
教科書的に言えば北朝鮮は社会主義経済を標榜しており、
この国の憲法には至る所に社会主義の文字が躍っているのだが、
その実態はというと経済活動が完全に麻痺してしまったゾンビ国家で、
社会主義経済下においてあって然るべき長期経済計画も全くない。
にも関わらず暴動も起きずに"とりあえず"経済が機能しているという
本書の言葉を借りるならば
「社会主義経済の教科書にも、旧社会主義国の経済変革を説明する
移行経済の教科書にも、そしてもちろん資本主義経済の教科書にも
見つけることのできない特異な経済」 (p18)
を併せ持つのが北朝鮮の姿なのだ。
本書では北朝鮮の経済史を詳説し、この国の経済の本質に迫っている。
政治的な事象を一切切り離して純粋に北朝鮮の経済に斬り込んでおり、
この国の経済事情のありのままを知ることが出来る。
一言で言うと北朝鮮は"根性"の経済である。
政府によって生産目標は高く設定される。しかし資金や資材はほとんどない。
そういった状況でも「工夫してやれ」と上層部から発破をかけられ、
一般の人々は寝る時間も返上して朝から晩まで重労働に励む。
だが、資金や資材も乏しいのにどうやって生産性を向上させるのか。
こんな状態でどんなに汗をかいて働いても単なる徒労にすぎないのは
おそらく日本の小学生でもわかることだ。
そんな無茶苦茶な経済運営や虚偽の報告を繰り返した結果、
今の北朝鮮の経済は"測定不能"の状況まで疲弊してしまった。
では北朝鮮の経済状況を改善するための処方箋はあるのだろうか。
作者はこう断言する。
「北朝鮮の経済が根本的に回復する可能性は、
現状では残念ながら「ない」といわざるをえない」 (p213)
しかし国家そのものが行き詰まることは目に見えているので、
いつかは日本もこの国の経済復興の一翼を担わなければならない。
そうなったときに一体どんなビジョンでこの国を復興させていくのか。
そのビジョンのカタチが全く政府から聞こえてこないのはどうしたことだろう。
ゲームならば北朝鮮の体制が崩壊したらそれでめでたくエンディングだが、
実際の政治では「その後」についても考えを巡らせなければならない。
あなたは日本人の一人としてどんな「その後」を描いているだろうか。
描くための道しるべとして本書をお薦めしたい。


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