BOOK REVIEW 31 正高信男『考えないヒト』

ISBN 978-4-12-101805-2考えないヒト ケータイ依存で退化した日本人
正高 信男
中央公論新社 2005-07-25
[中公新書 1805]

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タイトルと副題からして本を読まなくても内容がわかりそうな感があるが、
実際に読んでみるとそんな期待を見事に裏切らない。
絵に描いたような論理立て・構成ぶりに思わず苦笑してしまうという
「ケータイ文化論」を一般人向けに易しく咀嚼した一冊。

携帯電話は今や持っていない人を探すのが難しいほど
日本人、いや世界の人々に遍く普及した文明の利器となった。
中でも特に若者のケータイ依存は年々進んでいき、
ケータイは今や単に電話をするための道具ではなく、
音楽を聴いたりクレジット代わりになったりするなど
ライフスタイルには欠かせない存在となっていった...

この事実をネタにすれば社会学から生理学にいたるまで
どんな学問領域を媒介にしてでも話が膨らんでいくわけだが、
著者は自身の専攻の「霊長類研究」をここへ刷り込ませた。
そこは非常にユニークであって特筆すべきことだ。

ただ、その割には学術的な論考があまり成されていない上に
読み物としてもエッセイの延長線上となってしまっているのは
賛否両論が分かれるところだろう。
結局一冊を通して何が一番言いたいのかといったら
要するに「今どきの若者はこれだから~」という説教なのだ。

しかしケータイが齎した文明の副産物の是非については
本書の「霊長類研究」のように様々な視点から検討していく必要がある。
ひょっとしたら今まで全く浮き彫りにされなかった新事実が
学問を媒介にして浮動してくるかもしれない。

「テクノロジーによって生活は快適になった。
 しかしそれは、生活がより「文化的」になることと一致しないのだ。
 それどころか反対に、生活をより「非文化的」にすることもある」 (p122)

「ケータイ文化論」の入り口として本書を取ってみるのはいかがだろう。

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