BOOK REVIEW 26 瀬戸内寂聴 玄侑宗久『あの世 この世』

ISBN 978-4-10-114439-9あの世 この世
瀬戸内 寂聴 玄侑 宗久
新潮社 2006-05-01
[新潮文庫 せ-2-39]

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「ヒトが死んだらヒトはどうなるのか」という永遠の命題に対しては
国家や民族や宗教によって様々な違った捉え方がある。

日本人的に言えばヒトが死んだら今度は「霊」になって
この世で生きている人たちを遠くから見守ってくださる、
という考えが一番ポピュラーのように思うのだけれども、
中には完全に「無」になって原子も分子も存在しなくなるという
極めて現実的な考えをされる方だっていらっしゃるかもしれない。

では仏に仕える聖職者ならばどういったお考えをされるのだろうか。
きっと良い答えがあるに違いないと信じ私は本書を読み進めていた。
そして「答え」......

「わからない」

私は思わずたまげてしまった。
死んだら極楽へ行ってお花畑に囲まれながら毎日生きる...
なんていう"古典的説法"を密かに期待していたのだけど、
正面切って「わかりません」と言われたからにはどうしようもない。
お釈迦様だって「無記」と黙してあの世について何も語ろうとはしなかった。

聖職者だからといって森羅万象を知悉しているわけではない...
そんな謙虚な著者のお二人の姿勢にふと私は好感を抱いた。

本書は二人の対談(というよりも放談?)で構成されている。
帯コピーに「仏教入門」とあるので教養的な内容かとも推察されるのだが
系統的に仏教を語っているわけでもなければ、
ひたすら「あの世 この世」について論じている本でもない。
それどころか蓋を開けてみると大胆な発言のオンパレードであり
ここまで語って良いのかという内容も相まって実に興味深い。

修行中、いかにしてサボるかを延々と考えた話。
「一夫一婦制は問題だと考えています」 (p136) から端を発し、
男女関係の真髄に迫ったタブーを切り開く法話...

文壇の大御所である2人だからこそ語れる含蓄溢れる世界。
現代社会の風潮にも警鐘を鳴らしつつ、将来の希望へと教導していく。
激動の人生を生き抜いた先人たちのお言葉は何よりも重みがある。

明白な答えが書いてあるわけではないのだが、
「人生の休憩時間」として少しばかり読んでみるのもいいかもしれない。

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