![]() | 夜明けまで1マイル―Somebody loves you 村山 由佳 集英社 2005-01-25 [集英社文庫 む-5-15] by G-Tools |
「誰かを好きになるって化学反応みたいなもの」
帯コピーに絡めてあったこの言葉を前にふと考えてみた。
好きな子と一緒の空間を共有しているだけで、
ただ目と目が合っただけで、自分の心に稲妻が走る。
そしてその子のことが何よりも大切な存在へと昇華されていく。
好きな子が嬉しいときは、自分も嬉しくなるし、
好きな子が悲しいときは、自分も悲しくなっちゃう。
好きな子が笑っているときは、自分も笑っちゃうし、
好きな子が泣いていると自分までもらい泣きしてしまう。
まさに自分が"化学反応"的に相手と連鎖している瞬間。
そう気づいたとき、人はfall in loveを自覚する。
…あなたはそのfall in loveの瞬間を大切にしていますか?…
主人公の涯はバンド活動に勤しむごくごく普通の大学生。
そんな涯はふとしたことをきっかけに
大学の講師であるマリコさんと付き合うこととなる。
しかしマリコさんにはニューヨークに出張している夫がいる。
そして決してストレートに好きだとも言わない。
愛し合った後でさえもうまい具合にいつもすかされてしまう…
本当にマリコさんは僕のことを愛してくれているのだろうか?
ひょっとして寂しさ紛れで僕と付き合っているのじゃ…
対してバンド仲間である幼なじみのうさぎは男っぽい女の子。
でもなかなか恋愛には奥手で、
目の前に好きな男の子がいたら顔を赤らめてもう何もできない。
その不器用さが仇となり、うさぎの恋愛は迷走を続ける。
そんなうさぎの恋愛相談にのっているうちに
だんだん涯はうさぎを一人の生身の女の子として見るようになってくる。
お互い素直じゃないから、本音なんて言えやしない。
だけども、もしかしてオレたちって…・
この物語に出てくる2人の大学生:涯とうさぎはとにかくひたむきだ。
真実の恋愛を求めるため、fall in loveを信じるために
傷つきながらも前へ前へ進んでいる。
そもそもfall in loveしなくても男女が「付き合う」ことはできる。
2人は運命の仲だ、と振る舞う"フリ"もできる。
出会い系サイトが流行る昨今においては
そういったファッション感覚の恋愛も珍しいことではないのかもしれない。
だけども好きでもない子と抱き合った後に生じる
あの独特の虚無感を現代の若者はどう感じているのだろう。
相手ではなく「付き合っている」という状態そのものに
安心感を求めて、じゃあ2人に一体何が残るっていうのだろう?
fall in loveの瞬間を信じて主人公の2人が恋に奔走した意味。
瑞々しい感性を持ち合わせている同世代の人たちに捧げたい一冊だ。


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