BOOK REVIEW 13 星浩『自民党と戦後』

ISBN 978-4-06-149785-6自民党と戦後 政権党の50年
星 浩
講談社 2005-04-20
[講談社現代新書 1785]

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政治部記者出身で現在は朝日新聞編集委員を務める
星浩氏が著した「自民党とは何か」を知るための入門本。

自民党は良くも悪くも戦後日本を代表する国民政党である。
今日の経済繁栄は自民党政策の何よりの功績であり、
時にはウイングを左に伸ばして社会党的な政策までをも取り込み
国民の幅広い層から支持を集めてきた。

イタリアの政治学者:G.S.Sartoriは政党システムの諸類型として
「7つの政党システム論」を唱えた。
その中で自民党は一党優位体制に分類される。

この国では自由で公平な選挙が保障されている上に、
独裁政権というわけでもないのに関わらず
何回選挙をやっても必ず自民党が第一党となる。
(例外として参議院選挙では'89年は日本社会党、
 '04年は民主党に第一党の座を明け渡している)

こういった政党は世界的に見ても希で、
自民党と同じように長期政権を樹立しているスウェーデン社民党
が他に思い当たるくらいだ。

そんな世界でも奇遇な存在の自民党の50年の歴史を
この本ではわかりやすくコンパクトにまとめている。
しかし主に政局にスポットライトを当てているので、
政策的な変遷を本書で詳しく伺うことはできない。

自民党は結党以来一貫として与党の座を保守してきたが(55年体制)、
この50年の中で10ヶ月だけ野党に転じたことがあった。
それが1993年の細川非自民連立内閣~羽田「改新」内閣のときである。

下野の原因としてはもちろん政策的な行き詰まりや
自民党的政治手法の限界もあったのではあるが、
本書では党内の派閥の権力抗争に焦点を当てている。
ここには権力に日夜明け暮れている国民不在の政治家たちの姿があった。

野党に転落した自民党は1994年の羽田内閣総辞職時に
当時の社会党委員長である村山富市を首相指名して政権に復帰し、
イデオロギーでは対極にあった社会党と
連立政権を組むというウルトラCを演じた。
額面通りには誠に理解しがたい出来事だが、
ここには派閥と野党との根回しのパワーゲームが複雑に絡み合っており、
本書では新聞記者らしい視点からその一部始終を刻々と描出している。

また自民党といえば「カネ」のスキャンダルが絶えない。
その原因として本書で挙げられているのが、
派閥制度と事前審査制度だ。
(注:現在では厳密な意味での派閥は存在しない)

日本の政策の最高決定権は内閣でも首相でもない。
教科書では教えてくれないことだが実は自民党の総務会こそが
日本の舵を握る実質的な政策最高決定機関なのだ。

閣議提出される法案や政策の方向性などは
すべて事前に自民党の総務会にかけられ
自民党のGOサインがなければ国会に提出できない。
もちろんこのことは法律には一切書かれていないが、
慣習として"永田町の常識"と化していった。
このことを俗に事前審査制度と呼んでいる。

「これ(事前審査制度)が、自民党に巨大な権限をもたらす「玉手箱」となる。
 予算や法律を成立させるには、自民党の了解が欠かせない。
 だから、官僚たちは自民党議員のもとに日参する。業界の陳情も続く。
 それが自民党の票と政治資金につながる」 (P46)

 
その上、議員には党議拘束をかけられるので、
国会の採決もほとんど意味を成さなく儀式的な会となってしまう。
「自民党をぶっ壊す」と意気込んだ小泉内閣でも
この慣例を打破することはできなかった。

旧社会党は自民党の前で完膚無きまで敗れ去っていったが、
今の自民党には政権の座を奪いかねない政党が着実に力を付けている。
その政党こそが政権準備政党を標榜する民主党だ。
昨年の参院選で比例区では自民党を押さえ躍進し、
日本にも本格的な二大政党の時代がやってきた。

今年、自民党は結党50年を迎える節目の年だ。
しかし党是である憲法改正はその前哨段階である
国民投票法案ですでに頓挫しかけている。
そして日歯連における献金問題や年金問題、
イラク情勢、周辺諸国との関係に至るまで
自民党には耳の痛い問題が山積されている。

高度経済成長と日米安保の幻想に心酔している
自民党に日本の未来を預けることが出来るか否か。
有権者は政権党の行方を注視していかなければならない。

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